九州・西日本支部 2014年度総会・企業セミナー 開催案内



2014年度の九州・西日本支部総会・講演会を下記のように開催いた
します。支部会員各位は是非ご参加下さいますようお願い申し上げ
ます。なお、支部会員には別途総会開催案内を電子メールにてお送
りします。ご欠席の場合には必ず委任状をご返送下さいますようお
願いいたします。

         記

日 時: 2014年4月25日(金)
場 所: 九州大学伊都キャン パス内 稲盛財団記念 館 稲盛ホール
    〒819-0395 福岡市西区元岡744    
    
(1)総会: 14:00〜14:30
  1.2013年度事業報告・決算について
  2.役員交代について
  3.2014年度事業計画・予算について

(2)企業セミナー: 15:00〜17:00
  1.「癌治療用重粒子線加速器の超電導化に向けて(仮)」
    放射線医学総合研究所
    野田耕司 氏
  2.「大陽日酸の水素ステーションについて」
    大陽日酸(株)
    開発・エンジニアリング本部 水素プロジェクト部
    今村 等 氏

(3)懇親会(福岡都心へ移動): 18:00〜
    まる家
   〒810-0002 福岡県福岡市中央区西中洲1-18
   電話:092-731-2424

問合せ先:公益社団法人 低温工学・超電導学会 九州・西日本支部 事務局
〒819-0395 福岡市西区元岡744
九州大学大学院 システム情報科学研究院
電気システム工学部門 木須研究室内
TEL: 092-802-3678  FAX: 092-802-3677
E-mail: jcryo-qw(at)sc.kyushu-u.ac.jp

当日の報告



九州・西日本支部第13回総会を2014年4月25日(金)午後2時00分よ
り九州大学 稲森会館にて開催した。冒頭、出席者数と委任状の数
より総会が成立していることが報告された。そして議長に鈴木孝至
氏を選出した。松下照男副支部長の開会の挨拶のあと、続いて議事
として、2013年度事業報告、会計報告、ならびに監査報告がなされ、
全会一致でこれらは了承された。続いて、役員の交代について説明
があったのち、2014年度支部事業計画、2014年度予算案が諮られ、
それぞれ全会一致で承認された。事業計画では、今年度は、若手セ
ミナーが9月に熊本大学で行われる予定である。

総会に引き続き、午後3時より2名の講演者をお呼びして企業セミナー
が行われた。司会は九州大学の岩熊成卓先生で行われた

最初は「癌治療用重粒子線加速器の超電導化に向けて」と題して放
射線医学総合研究所の野田耕司先生から講演をいただいた。重粒子
線による癌治療はすでに1970年代から米国のローレンツバークレー
で行われていた。しかし検査技術があまり発達していなかったため
に、患部にきちんと当てることが難しく、成果はあまりでなかった
ようである。日本は1980年代になって研究が進み始めた。HIMACは
1990年代から作られた。施設は40mのシンクロトロンを用いているの
で、巨大な施設である。ワブラー法により患部にきちんとあたるビー
ムを作り出している。また積層原体照射法を利用することにより3次
元で患部に当てることに成功している。また呼吸と共に動くことを
避けるために、息が止まっているときのみビームが当たるようになっ
ている。治療だけでなく夜間は共同利用で研究に使われている。現
在は年間1000件ほど治療が行われている。胃とか腸は動くことと、
薄いので現在は治療できない。抗がん剤で転移を防ぐことができる
ので、うまく組み合わせることにより生存率が格段に高くなる。
100億円から120億円の小型重粒子線加速器施設を設計している。群
馬大学で普及型として2010年3月から治療を開始している。さらに次
世代型について検討をすすめており、治療と共に患部を完全に照射
できる3次元スキャニング法を検討している。そのために高速スキャ
ニングが必要となる。従来の20倍まで高速化に成功した。これらの
要素研究がすすみ、新治療研究棟を2008年に建設し始めた。2010年
11月に初スキャニングした。患者が体を回転させる必要の無いガン
トリーの検討や、超電導化の検討が現在進められている。佐賀県鳥
栖市のSAGA-HIMATでは2013年8月から治療をはじめている。2014年4
月からは第2室が運用開始した。岩手県の施設では2015年治療開始予
定である。シンクロトロンを超電導化すれば直径10m程度とかなり
小さくできる。

質問では、治療費が高額ではないか、ということについてであった。
抗がん剤でもかなりかかるので、1年間で300万円かかるという治療
費がかなり高いかは判断次第であるという回答があった。また医療、
保険、などさまざまな要因が重なるので、複雑であるということで
あった。超電導化すると時間短縮、コスト減、小型化などが図られ
るので、超電導技術に期待しているということだった。

次に「大陽日酸の水素ステーションについて」と題して大陽日酸
(株)の今村等先生から講演をいただいた。二酸化炭素を出さない、
燃料電池自動車(FCV)を支える技術開発をしている。開発団体として
はHySUT(水素供給・利用技術開発組合)がある。ここで燃料電池自動
車の普及を目指して、実証研究を通じて技術開発をしている。すで
に全国に17カ所実証水素ステーションがある。九州では、北九州と
九州大学と鳥栖にある。圧力は35MPaである。トラックで動かす水素
ステーション霞ヶ関があり、霞ヶ関には6台のFCVがある。また燃料
電池車の原理の説明があった。電気分解の逆で、水素と酸素から電
気を取り出すことができる。効率が83%と高い。水素はさまざまな方
法を使って作り出すことができる。水素は正しい使い方をすれば既
存燃料と同様に安全であり、間違えば同様に危険である。現在でも
47億ノルマルリューベ/年で500万台分を作り出している。電気自動
車は充電に7時間かかるが、FCVでは3分程度である。航続距離も
500kmくらいはいく。一番の問題はコストが高いことである。水素ス
テーションもイニシャルコストがかかる。そのため、コストダウン
が課題である。2015年春にトヨタとホンダが一般向けにFCVを販売す
るとアナウンスしている。2025年にはFCVが200万台、水素ステーショ
ン1000カ所を目指している。2015年までに100カ所、福岡には10カ所、
高速道路に10カ所を目標としている。水素ステーションの建設費は
4億から5億円かかり、水素を作るタイプは6億円ほどかかる。35MPa
と70MPaがある。オフサイトではカードル輸送またはトレ−ラー輸送
する。オンサイトでは都市ガスやナフサとかをパイプとかタンクロー
リー輸送する。70MPaは-40度に冷却しないと圧縮熱で80度を超えて
しまう。コスト削減のために大陽日酸ではパッケージ型水素ステー
ションを工場で作り、現場では設置するようにしている。20 フィー
トのコンテナ程度に収まっている。パッケージにすることにより法
律上も移動型でも固定型(ガソリンステーション併設可能型も含む)
でも対応できる。プリクーラーについても小型化した。圧縮機はガ
スブースターでやっている。25tトラックで動かすことができる。
マザーステーションからドーターステーションに運ぶことができる。
2013年は19カ所の水素ステーションが補助対象で、九州は1カ所ある。
さらにコスト削減のためには規制合理化が必要で、さまざま検討で
きる。東京オリンピックをにらんでFCVバスやFCVタクシーなどが導
入されるかもしれない。

質問では燃費の話題がでた。1リューベで10km走り、5kgで満タンで
ある。これが11リューベ相当で550kmの連続走行ができる。現在は
120円/リューベであり、この値段が60円/リューベ×11リューベ=
660円になるように努力しているが、まだまだかなり高い。そのコス
トは輸送費が高いためであり、圧縮水素だけでなく、液体の輸送媒
体、固体の輸送媒体などさまざまな方法が現在も検討されていると
いうことであった。このセミナーには多数の参加をいただき、参加
者は講師を含めて42名であった。

(九州工業大学 小田部荘司)